■「地域の食」を探求する  
ーー 瀬戸内食のフィールドワークから

2022年度のフィールドワークの報告をまとめたものが、ジャーナル『未来共創』で発刊されました。
内容は、フィールドワークのエッセイ(山道、Voluntad)、インタビュー記録(高松)とし て報告し、「食の循環」、「地域の食と家庭食」をテーマとする 2 つの論稿(斎藤、 伊東)です。人間科学部、医学部、理学研究科、工学研究科といった多分野の学生たちが共にフィールドノートを確認しながら、執筆しました。
ぜひお読みいただき、ご意見・ご感想等がございましたら、お知らせください!

タイトル:
「地域の食」を探求する ーー 瀬戸内食のフィールドワークから

木村 友美 大阪大学大学院人間科学研究科
斎藤 優久乃 大阪大学医学部医学科
伊東 実穂 大阪大学人間科学部
山道 萌子 大阪大学大学院理学研究科博士前期課程
VOLUNTAD Raffaello Riley  大阪大学大学院工学研究科博士前期課程
高松 真夕 大阪大学人間科学部


ジャーナル『未来共創』第10号(2023)ISSN2435-8010

イントロ(論文より一部抜粋)

1.はじめに
本稿では、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センターのオープン・ プロジェクト「地域の食とプラネタリーヘルス」1 の一環として実施したフィー ルドワークについて報告する。本プロジェクトは、地域に根ざした食の探究を 通じて、人と環境の双方の「健康」を目指す「プラネタリーヘルス」の実践にむけ た学びと発信を行うことを目的に、2022 年度より活動を開始した。  「地域の食」を探求するうえで、調査地としたのは瀬戸内地域である。瀬戸内 地域は、その自然豊かな景観をもつ一方、高度経済成長期の工場誘致の加速に よって工業地帯周辺で環境汚染が深刻化した歴史もあり、環境保全の観点から、 日本で初めての国立公園に指定された地域でもある。そして、近年では芸術祭 などのイベントも取り入れながら、観光による地域創生が活発になされている。

そこで、本プロジェクトでは、環境に関する諸課題を重視するとともに、も う一つの軸として、日本社会における地方創生の文脈における地域おこしに も注目する。地域おこしにおいて、食は重要なテーマの一つであり、「食で地 域を元気に」というスローガンも聞かれる。「食によって、人の健康だけでなく、 地域・環境を健康にする」と広義に解釈すれば、それは、人と地球環境の健康を 切り離さずに考えるプラネタリーヘルスの理念 2 とも相通じるものである。環 境問題に立ち向かいながら、自然景観・環境を生かした地域おこしを行う瀬戸 内地域は、プラネタリーヘルスの理論と実践を考えるうえで恰好のフィールド といえる。  本稿では、瀬戸内地域において実施したフィールドワークについて概要をま とめ、内容の一部をエッセイ(山道、Voluntad)、インタビュー記録(高松)とし て報告し、「食の循環」、「地域の食と家庭食」をテーマとする 2 つの論稿(斎藤、 伊東)を提示する。